××× of the Dead

scene-24 下にあった血痕からすると、斬罪の執行者は学園の方に逃げていた。 あっちへ逃げたのなら、また出会う可能性があるかもな。 思いながら五階へと降りて来た僕の足は、それを前に動きを止めた。 その奇妙な物は明滅するように躍動していた。そう、そ…

scene-23 真帆の姿が闇に消え、女子生徒の強い意志を称えた目が伏せられる。 小さな溜息を吐き、彼女は振り返った。「そろそろ出てきてもいいんじゃない?」 反射的に僕は背後の壁に自身の身体を押し付ける。 見つかった?って言うか、見つかっていた?「出…

scene-22 僕がシャワーを借りている間に、誰かが来て着替えを置いて行ったようだ。って言うか、脱いだ服も片付けられていた。 ま、ある物を適当に着てみる。……ミニスカって言ってたけど、上半身も袖無しかよ。寒そうだなぁ。これ、ヘッドドレスっていうのか…

scene-21 白い部屋だった。 窓も家具らしい家具もない。ただ白いだけの部屋。 僕が死ぬ前に入れられていた病院よりも無機質なその部屋は、微妙に寒かった。 そりゃ寒いだろうよ。素っ裸で上掛けもなしで寝かされているんだからな。って、言うか、何で裸なん…

scene-20 結局、僕はドSは手を取らずに店を出て……ドSの案内でベースキャンプに向かっていた。ドSにストーキングをされるのも鬱陶しかったし、撒くのも面倒だったからだ。 ベースキャンプと言うのは獄卒の休憩所みたいな物で、いまは安いビルを一個丸ごと借り…

scene-19 餃子を中央に置き、僕とドSは静かに睨み合っていた。 空になったチャーメンの皿は、どちらも下げられている。テーブルには餃子一皿とタレの入った取り皿が、僕とドSの前に一つずつ。コップに水差しもあるがそれは問題じゃない。 問題なのは、餃子が…

scene-18 困った。いや、別に困ってないけど……まぁ、困ったなと思う。 よく考えたら呼び名を知らなかったが、朽木のグループが壊滅させられたのだ。 僕は運良く整備の終わったカブに飛び乗り早々に逃げ出せたが、他の面々は壊滅させられたようだった。 逮捕…

scene-17 ドSの注文を手に戻ってくると、ヤツは堂々と僕のポテトを摘んでいた。 「ちょ、お前、誰のポテトを食べているんだよ?それは僕のだろ!」 僕の声を聞き、嬉しそうに口を歪めてドSは振り返る。 「おや?君は己の事を『僕』と呼んでいるのかい?」 …

scene-16 小学校の保健室……僕が寝泊まりしている部屋の壁掛けの鏡の前で、僕は信じられない光景を目にしていた。 鏡に映っているのは僕。その後ろには苦笑いをした女子。昨日、僕の髪を切ってくれた女子生徒が僕の顔を覗くように見ている。そして、その反対…

scene-15 不快な目覚めだった。 目を閉じたまま、僕はその不愉快な朝に口をへの字に曲げる。 窮屈さを感じていた。 思うように身体が動かせない。 腕が拘束されている。それに、足もだ。 両腕を上げた状態で固定されている。足もベッドの柵に拘束されている…

scene-14 以外にも出口側は廃墟のような雑居ビルだった。いや、ここは予想通りと言うべきだろうか? 出口は、出島に掛かる唯一の橋から通りを一本隔てただけの場所にあった。 僕の隠れていた公園が出島の反対側の端にあったんだから、時間的に考えて、出口の…

scene-13 久しぶりに見た朽木はトイレの敷居の上から顔を出し、嘘っぽい作り笑顔で僕に言う。 「っていうかさ、ここ……開けてくんない?」 顎でドアを指し、にこやかな笑みを続ける。が、その表情に僕は胡散臭さしかを感じることができない。 「何で……どうし…

scene-12 誰もいない公園のベンチに座り、大仰な溜息を吐く。 結局、学校をサボってしまった。まぁ、内申とか関係がないからいいけど。ほんとは良くないけど、良い事にしておこう。 しかし……見事に誰もいない公園だな。 僕は周囲に胡乱な目を向ける。自販機…

scene-11 本調子にはほど遠い身体を引きずり、僕は一人で町を彷徨っていた。いや、ほんとは行先とかちゃんと分かってるけど、気分的には彷徨ってるって感じだった。 しかし、なんで身体がまだ治り切ってないのにこんなところを歩かされているのかと問いたい…

scene-10 そして、深夜のファミレスの前で僕は呆然としていた。 「さ、ここが24時間営業のファミリーレストラン『Valentino』です」 誇らしげに藤堂は振り返る。振り返り、両手を広げる。と、自動ドアが藤堂に反応し、静かに開いた。 「いや、ちょっと待てよ…

scene-09 出島にある小さな教会に僕は来ていた。 チャペルがどうとか綺麗な礼拝堂がどうとかいうより、ただの西洋風のお墓の横の建物って感じのところだった。 十字架のある小さな小屋の前にベンチがあり、墓参りの前後にちょっと休憩できるようになっていた…

scene-08 暗い空を静かに雲が流れていた。 肌に感じる風は無いのに、雲は流れて行く。 空に近い場所にだけ風があるのか、それとも肌に感じることの出来ないほど弱い風が吹いているのか……僕には分からなかった。 明るい夜空を雲が流れて行く。そして、その空…

scene-07 静かな気持ちで散策しているなら、それなりに有意義な時間になりそうな小道だった。 踏み締められた土の道。空に近い場所では竹林がからからと鳴り、穏やかな風に竹はその表情を変える。 虫の音は無い。小道に沿う川の流れも静かで、ぼんやりと眺め…

scene-06 手書きの地図を片手に僕は大通りの方に足を向ける。 しかし、まだ午前中なんだな。バスで寝てたから時間の感覚は狂ってるけど、太陽の位置から見て、昼は回っていないのを確認出来た。 足元の道路は相変わらず土が踏み固められたような感じだし、路…

scene-05 藤堂の後ろに並び、バスの後部ドアからバスを降りようと僕は席を立つ。 「お待ち下さい。会長、忘れ物です」 「ん?あぁ、そうだね」 楽しげに口の端を歪め、藤堂は振り返る。が、あれ?何で運転席に女の子がいるんだ??? あそこにはバスの運転手…

scene-04 一本の橋の手前で、朽木はゆっくりと振り返る。 「着いたぜ。この先が安全地帯……学園だ」 それは片道八斜線ある滑走路のような巨大な橋だった。 空はいつの間にか白々としていた。 道幅は悠然と広く、橋はどこまでも長く伸びているように見える。 …

scene-03 何も無い空だった。 手を差し出す場所も無く、足を踏み出す場所も無く、寄り添う場所、凭れる場所、掴む、掛ける、その全てが無い、そんな空間を僕は飛んでい、、、、 浮遊感は一瞬で、落下は重力を、己の重さを、僕に実感させた。 「ぅ、うわ、ひ…

scene-02 そこは確かに病院の待合室と受付だった。……だったが、これは何だ?何が起こったんだ??? 無数の弾痕のある壁。バリケードのように積み上げられた長椅子や机。それで塞がれたドアや窓。それに、無数の靴跡のある埃の溜まった床。 古い戦争映画で、…

scene-01 唐突に、それは訪れた。 いや、違う。そうじゃない。『訪れた』のは僕だ。 僕が唐突に訪れさせられた……んだと思う。思った瞬間、僕はバランスを崩して尻餅を着く。 「痛っ」 小さな声が漏れ、それが思いのほか大きく響き、僕は慌てて両手で口を押さ…