Wheel of Fortune

Act −005 床に転がされた中年の男が明るく喋るのを、少女は携帯電話を向けながら聞く。男は後ろ手に縛られ、足も頑丈なロープでぐるぐる巻きにされている。 じっとりと嫌な汗が頬から落ち、床に染みを作っているのが僕の目にもわかった。 少女が携帯電…

Act −004 深夜まで続いたバイトも終わり、俺は煙草を取り出し……火を着けた。 場所は、コンビニのある表通りのすぐ裏手、ぶっちゃけコンビニの裏だ。 煙草を燻らせつつ、今日一日の出来事を振り返る。って言っても、組織の連絡用の店なので、基本的に客…

Act −003 早鐘のように鳴り響く胸を押さえ、私はコンビニの自動ドアが開くと同時に店に飛び込んだ。 信じられない。と言うか、びっくりした。 家までの近道に公園を横切ったら、そこで別れ話の真っ最中だった。いえ、正しくは、別れ話の始まりだった。…

Act−002 達也から連絡を貰ったのは、今日だった。 急な話である。しかし、女子(可愛い。ここ重要)とのカラオケだと言われて断れるだろうか。 否、である。 俺は喜々として待ち合わせの駅前に立っている。そう……女子との触れ合いなんか滅多に無いんだ…

Act−001 ゴールデンウィークも終わり、俺はぼんやりと窓の方に顔を向けていた。 空を眺めていたってのもあるけど、横に座る泰葉をさり気無く無視していたのもある。そう、あくまでさり気無くだ。 流れる雲を目で追いながら、昼飯の予定を考える。 昼は…