Guilty 〜汝は人狼なりや?〜

第八日目 昼 1. 微かな違和感に僕は目を開ける。 すると、もう室内は窓からの明かりに照らされていた。 「もう……朝なのか?」 自然と目に手をやり……ザラッとした感触に、思わず顔から手を離す。離し、目を眇めて、僕は自分の手を見る。 「埃?」 と、呟く…

第七日目 夜. 月明かりの下で、僕は瑠璃と話をして過ごした。 窓から差し込む月の光は、優しく全てを包み込んでくれそうだった。ほんの少し色を濃くした影が、古い映画のようにも見える。 明かりも点けずに僕らはいつまでも話し込む。 どうでもいい日常的な…

第七日目 昼 2. 倒れ込むように座り、本田総司は眼鏡を投げ出した。目頭を指で揉み、自嘲的に呟く。 「駄目だな。井之上鏡花と志水真帆は完全に俺を疑っている」 場所は、喫煙室。午後の静寂が支配する部屋の中で、僕らは夕刻の投票までの時間を過ごす。 …

第七日目 昼 1. いつもより早い時間に、僕は与えられた部屋を出た。 瑠璃と連れだって談話室へと下りる。静かな廊下を、欠伸を噛み殺して歩く。 僕も瑠璃も無言だった。 瑠璃はどうかしらないが、少なくとも僕は寝不足だった。ここ数日は睡眠時間が足りて…

第六日目 夜. 薄闇の中で、僕はぼんやり天井を見ていた。 ベッドからは、瑠璃の静かな寝息が聞こえて来る。 時折、外で狼の遠吠えが聞こえる。その度に、瑠璃が寝苦しそうに溜息のような息を吐く。 狼は……人狼は、ここには現れない。そう知っていても、寝て…

第六日目 昼 1. 朝、談話室に下りると同時に、溜息が聞こえた。 誰が発したのかは、すぐには分からなかったが、そんな事はどうでもいいんだって事に気付く。 古川晴彦の姿が見えないのだ。 僕以外の人間が揃っていれば、そこから一名を抜けば、それで全員…

第五日目 夜. 瑠璃の寝息が落ち着くのを待って、僕は静かにソファから身体を起こした。 ソファの背凭れから顔を出し、瑠璃が間違いなく眠っているのを確認する。 ゆっくりと、静かに……足音を忍ばせて、窓辺へと身を寄せる。猫のように音を殺し、薄闇の中を…

第五日目 昼 2. 夕方になり、相良耕太は談話室に戻って来た。 ちらり、と円卓に視線を向け、自分の席へと戻る。と、円卓には背を向けて、僕の方を向いて座る。椅子の背凭れに手を置き、じっと僕を見つめて来る。 「なぁ、加納……『預言者』が信用を得るには…

第五日目 昼 1. 朝早く、与えられた部屋を出て一階の談話室へと足を向ける。簡単な身支度をして、死者の仮面を付けて……もう見慣れた階段に足を下ろし、変わる事の無い窓の外の風景に目を向ける。 霧が煙っている。あるか無しかの風に濃淡を付けられながら…

第四日目 夜 1. 与えられた個室の備え付けの洗面台で、僕は狂ったように顔を洗う。 何度も顔に水を掛け、息継ぎのように顔を上げ、再び顔に水を浴びせる。 右の拳に痺れるような痛みがある。その痛みを無視して、顔を洗い続ける。自分の中にある怒りを、必…

第四日目 昼 1. 次の日。僕は談話室に集まる者達の様子をぼんやりと見ていた。いや、多分……見ているようで、見ていなかったんだと思う。横に立つ瑠璃が心配そうに僕の顔を何度も見ている事にさえ気付いていなかったんだから。 一人、また一人と、ある者は…

第三日目 夜 1. 霧の晴れた夜の風景を、僕は窓辺で見ている。日本式の建築と違い、二階の位置が高いのか、ここからは森の様子がよく見えた。 月の冴える、色彩を無くしたモノトーンの世界。その世界で、時折思い出したかのように狼の遠吠えが響く。 窓から…

第三日 昼 2. 円卓に着く面々に、藤島葉子は間違いなく他殺だった事を告げ、遺体が霊安室に運ばれるまでの間……本田総司は、僕らをエントランス横の一室に誘った。 これは……植物園、になるんだろうか?色々な植物が置かれている部屋だ。 部屋はかなり広く………

第三日 昼 1. 眠れないまま、僕は薄く目を開く。 いや、夢を見ていたような気がするから……眠っていたのかも知れない。 僕は部屋にあったソファに寝転んだまま、後頭部の下で手を組んで、微かに記憶に残る夢を反芻する。 あれは……誰かと一緒にいた。一緒に……

第二日 夜 1. 堅い……堅い感触が後頭部にあった。後頭部だけじゃなく背中全体に広がっている。腕や足も、ひどく重く感じる。 虚ろなまま目を開く。 白い……シーツのような物が顔に掛けられていた。いや、それは全身を覆っていた。 寝ている身体全体を一枚の…

第二日 昼 3. 霊安室から戻った本田総司と田沼香織は、矢島那美の遺体は間違いなく欠損があった事を告げた。 その後、午後六時三十分が日没なので、六時に集合となり、それまでは自由時間となった。 僕は一人で館の中をぶらぶらと歩く。一階の館の横……と言…

第二日 昼 2. メイドの案内で、ルルイエの館の三階に僕らは来ていた。 基本的に、二階を男子、三階を女子が使っているようだった。男子のほとんどが物珍しそうな顔で廊下や階段を見ていたので、たぶん……そんなところだろう。 「こちらが矢島那美様がお使い…

第二日 昼 1. 太陽の光を避けるように、僕は顔を下に向ける。 固い床に額を押し付け……その痛みから逃れるように仰向けになる。 「ぅ……」 微かに呻き、自然と腕が目を隠す。 奇妙な違和感があった。 固い、何か固い物の上で寝ているような違和感。……いや、…

第一日 夜 月明かりだけの室内から、窓の外へと視線を移す。 静かな夜だった。ときおり、獣の遠吠えだけが聞こえてくる。 「……何か見えるのか?」 手に持った拳銃を弄びながら少年が訊いた。少年は拳銃から銃弾を抜き、一つ一つを試すように込め直す。古いリ…