軌跡
 
 
 焼けた線路の匂い。
 有刺鉄線に忘れられたままの早贄が薄い雲を呼び、遅咲きの桜を散らす。
 
 
 薄紅に染められた白い花びらは風に舞い、地に落ちて、汚れた物のように捨てられる。
 
 
 風に触れられ流れる私もいつか汚れた物として、貴方に捨てられるのでしょうか?
 
 
 雲を透かし影を殺す陽射しを受け入れるように、貴方を信じる事を出来るのは愛に幻想を抱いているから。
 私の流す血を貴方は喜ぶでしょう。
 
 
 ただ一度の想いに何を期待しているの?
 
 
 散る花に乱され狂う春の空、纏いし愛が贄と呼ぶなり。
 
 
 狂うほどに愛を信じ、壊れるほどに貴方を求める。
 交わされる言葉より確かな物と信じて。
 
 
 指で触れ初めて知った唇の柔らかさに貴方を怖いと思いました。