浄罪
 
 
 この坂を登る度に思い出す。
 償う事の出来ぬ罪の数々。
 盗み、犯し、殺す。
 生きる為の時もあった。享楽の為の時もあった。
 だが、それが罪の本質を変える事は無い。
 
 
 深く影を残す太陽は自虐さえも許さず、私の背を追い続ける
 
 
 逃げる為に身体を寄せた女達のキッスは甘くその肌は冷たかった。
 仕方ないと笑った女がいた。暗く寂しげに笑った女もいた。
 彼女達の乳房に顔を埋め、私は震えていたのだろうか。
 
 
 錆びた鉄の音が落ちてくる。
 錆びた血の味が乾き続ける。
 
 
 坂の途中で私は目を閉じ、安らぐ日々の夢を見る
 
 
 私は娘の手を取り、優しく微笑み、他愛の無い夢想に耳を貸している。
 小さな影は踊るように手を振り、駈け出しては立ち止まる。
 妻は私と娘の帰りを家で待っていた。