異人館奇譚

後編 私は食事を済ませた後、特にする事も無かったので二階の寝室で休む事ことにした。 靴を履いたまま、ベッドに横になる。 ぼんやりと上を見ると、天蓋の裏側には淡い色のレースが貼られていた。 この洋館にはラジオも本も無かったので、私は時間を持て余…

中編 私は、赤い煉瓦が敷き詰められた坂を登っていた。 このオランダ坂と呼ばれる道は、人が辛うじて擦れ違える程の幅しか無かった。 辺りの塀と植え込みが、丁度良い日陰を作ってくれているのが助かったが、勾配のきつい坂道を随分と登って来たため、額に汗…

前編 珍しく旧友の湯坂が電話をしてきた。 用件も告げず、あの頃は良かっただの、俺達も年を取っただのと言っている。 この男は、頼み事があると何時も用件を後回しにするのが悪い癖だ。しかも、後になればなるほど嫌な頼みと言うのが今までの経験でわかって…