眩暈
 
 
 私は、誘蛾灯に誘われる虫です。
 この身が焼け、地に落ち、略奪者である蟻達に全てを奪われると知りながら、淡い光の下で踊る哀れな虫です。
 蟻達は、私の身体から奪い取った美しい燐粉に飾られた羽を恭しく捧げ、どこまでも行列を作るでしょう。
 その先には、肌を焼かれ手足をもがれた人形があり、その腹を登り-あたかも冬の魔に覆われた山を征服するように-暗い穴へと行進を続けるでしょう。
 
 
 狂った祭りのように羽が揺れます。
 
 
 私と言う虫は、彼らの生贄となるのです。
 あの淡い誘蛾灯の下で、私の屍骸は弄ばれたようないくつもの欠片となり、同朋の哀れむ目に晒されるのです。
 微かに揺らぐ、この眩暈にも似た風景は繰り返され、明日は明日の同朋を、昨日は昨日の同朋を選ぶでしょう。

 今日、私は誘われるまま死を迎えました。