もざいく
 
 
 ふとした……季節の薫りに、無くした景色を思い出します。
 
 
 柔らかい陽射しは輪郭を溶かし、静かな風は湖に小さなモザイクを作り、私の髪を揺らしてました。
 
 
 小石を波が洗うころころとした音。
 あなたが何かを囁いています。
 その聞こえない声に、わたしは微笑みます。
 
 
 桟橋を降りるとき差し出しれた手に、私は照れて、小さく笑って……。
 
 
 指先がふれあうときの驚いたような心臓の音、おぼえてますか
 
 
 今、誰もいない喫茶店で一人の時間を楽しんでいます。
 静かにカーテンを揺らす緩やかな風は、あの日と同じ金木犀の薫りです。