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レジを終え、私はコンビニ袋を片手に店を出る。
くしゃっと、前髪を掴むように帽子を下げるのは、この冬から始まった私の癖だった。
店を出ると自然に目が空に向けられる。そして、呟くように言葉が漏れた。
「……雪、かよ」
淡い雪が、朝のまだ青く染まり切っていない空の中で散っていた。
コンビニの前でまるかぶり寿司の予約を受けているお兄さんも寒そうに手を息で暖めている。
私はそれを横目で見て歩き出す。
本当に寒そうだった。
大丈夫なのかな?と、もう一度、私は振り返る。
やっぱり寒そうなお兄さん。と、その前に置かれる缶コーヒー。
「お疲れさん。寒いけど頑張ってな」
店から出て来たおじさんが、お兄さんの手を上げ、早足に自分の自動車に戻っていく。
「あ、ありがとうございます!」
一テンポ遅れて、慌ててお兄さんは立ち上がる。
「ええって、それでも飲んで暖まってな」
おじさんは自動車に乗り込み、それを待って、お兄さんも席に座る。
帽子に手を置き、私はその様子を見ている。
お兄さんは缶コーヒーを両手で包むようにして、おじさんの自動車が出るのを待ち……走り去る車に、もう一度頭を下げた。
ってか、朝から青春ドラマかよ。
帽子を深く被り直し、私は歩き出す。自然、口元が笑みの形になった。
昨日の朝の風景だったりする。
殺伐した小説ばっか書いていると、こんな日常の一シーンに嬉しい気持ちになったりします。