まだ青い空の下、ぼんやり浮かぶ、あの月を酒の肴に呑もうじゃないか。
 おいらとあんたの間には、徳利一つと盃一つ。
 
 
 浮世の愚痴でも言いながら、膝突き合わし、呑もうじゃないか。
 湿っぽいのは苦手だが惚れた女の話しもいいねぇ。
 月を浮かした盃を見て愛でながら、呑もうじゃないか。
 おいらとあんたの間には、徳利一つと盃一つ。
 
 
 すすきを揺らすあの風が火照った体を撫ぜて行く。
 ぽつりぽつりと呟きながら、おいらはあんたに酌をする。
 
 
 月に掛かったあの雲に惚れた女を思い出す。
 そらそら呑めと言いながら、あんたはおいらに酌をする。
 
 
 月とすすきと浮世と女。
 徳利一つと盃一つ。
 明日の夢も、昨日の愚痴も酒の肴に呑んじまう。
 あんたとおいらの間には何にも無いから飲み明かそう。